
生地の可能性/kijinokanosei
2022年に始まった「kijinokanosei」。生地をつくる過程の可能性を探り、それにまつわるものづくりの可能性も広げていく、プロジェクトのようなブランドです。
長年、生地の仕事に携わってきたデザイナーの田中喜子さんと、織物の産地で繊維業を営む人たちが共に考え、話し合いを重ねながら、個性豊かな生地をつくり上げています。
受け継がれてきた織物の技術から生まれた生地たちは、無限の可能性を秘めています。たくさんの思考や技で織りあげられた、1本の糸から始まった生地。目にし、触れて、使うことで、つくり手の思いが伝わってくるようなものづくりをしています。

田中さんが愛知県一宮市を中心としたウールの産地「尾州」で、生地の仕事にたずさわったのはおよそ20年前。そのころからすでにファストファッションの流行ははじまっており、繊維業界は厳しいと言われていました。
効率優先の生産の流れ、コロナ渦の電気代高騰などで近年はさらに厳しくなり、職人さんや工場の廃業が相次ぎ、面白い形状の糸や、複雑で手間のかかる糸をつくる技術が失われつつあります。
それでも、素材の面白さを追求しながら、産地の方々と協力し希少な糸を別注でつくるなど、手間を惜しまず制作をしています。
糸を紡ぐ、染める、織るといった工程は、複数の工場による分業体制。
それぞれの工場や職人さんには個性があり、「ふっくらとした風合い」や「つるっとした上品な仕上がり」など、つくり手によって雰囲気が変わるそう。
そういった特徴を生かしながらデザインを考え、予想と違うものができたときもいいと思ったものは採用しながら生地づくりをしています。


糸のセレクトで生地の表情はガラリと変わるため、理想の糸を探したり、新たにつくったりすることの手間を惜しみません。
その努力こそが、生地の奥行きや風合いを生み、kijinokanoseiの世界観をつくり上げています。
伝統を守りながらも、”プロダクトデザイン”として生地の魅力を届けること。
産地として廃れないように、工場に依頼をし、製品単価も上げ過ぎないこと。
生地を通して生まれる出会いや会話を大切にしていきたい。
そんな思いが込められた「kijinokanosei」。
フリーデザインもその思いに共感し、生地を通じて豊かなつながりが生まれていくことを楽しみに思います。

アイテム一覧
柄の詳細

アトラス/atlas
細かな織りを得意とする繊維産地・桐生市。ネクタイ生地の工場で織ったジャガードは、月の満ち欠けをイメージした半円の丸みを美しく表現しています。
経糸(たていと)は柄を邪魔しないように極細のポリエステル、緯糸(よこいと)にはコットンと小さなワッカのブークレ糸を使用。組織の表と裏を交互に入れ替えることで表情が反転し、片面はウールのもこもことした膨らみ、裏面はコットンのつるっとした風合いを楽しめます。
素材:ウール 49%、コットン 23%、ポリエステル 18%、ナイロン 10%

つみきのいえ/tsumikinoie
三角や四角のつみきを重ねたような柄は、毛足のあるモール糸で表現されています。そのため少し表面がふっくらとしていて立体感が出ています。モールの糸は光る糸、光らない糸の2種類を使っているため、陰影により奥行きを感じられます。
素材:コットン 40%、レーヨン 40%、ポリエステル 20%

花格子/hanakoushi
十字架のようなクロスの組織は裏からみると小さな格子状になっています。経糸(たていと)に太めの12番手双糸のロービング糸、緯糸(よこいと)にはそれより少し細い16番手双糸の紡毛糸を使用。太さと性質が異なる糸に変えることで程よい縮率の差が生じ、クロスに囲まれたスクエア部分に丸みが生まれました。
素材:ウール 100%

ビードロ/biidoro
不規則な太さが特徴のコットンスラブと、リネンを織り込んだツイード。ちらちらと絣(かすり)に染められたコットンと、ほんのり光るラメの糸は、絵付けされたガラス細工をイメージしています。箔の意匠糸は、まずフィルムの生地を細長くカットするところからはじまります。その後、光沢のあるスパークリングナイロンを、リリヤン編みで筒状にしながら、糸状になったフィルム糸を入れ込んでいくという特殊な紡績技法を用いています。
素材:レーヨン 55%、コットン 45%

麦藁/mugiwara
デザイナーが偏愛しているコットンのギマ糸を使用。ギマは「擬麻」と書き、麻に似せているという意味。綿の細い糸を数本揃えて植物成分をコーティングし、テープ状にしている面白い意匠糸のひとつです。
感触が涼しげで軽く、艶のあるレーヨンを織り合わせることで、光沢による柄が浮かび上がります。乾燥したタッチ感とレーヨンのツヤ、やわらかさが相まって独特の風合いに。織りづらい糸のため、低速織機を使い職人さんが機械に付きっきりで織っています。
素材:コットン 43%、レーヨン 32%、リネン 25%

チェリー/cherry
綿スラブと、レーヨン、麻をさまざまに撚り合わせた糸でざっくりと織られた不思議な千鳥格子風の組織。レーヨンの軽さのあるきらめきと、オレンジとピンクの色の移り変わり、撚り杢(もく)されたコットンや麻の深みのある色合いが混ざり合い、春らしさのあるツイードに。
素材:コットン 79%、リネン 19%、ナイロン 1%、ポリエステル 1%

糸巻き/itomaki
余った毛糸をくるくると束ねて残してあるものがたくさんあります。次にいつ使うか分からないけど捨てられないもの。その巻かれた糸をイメージした刺繍です。
素材:ベース リネン 100%/刺繍糸 コットン 100%(ブックバック)
ベース ウール 80%、リネン 20%/刺繍糸 コットン 100%(スツール 60 クッション)

アンズ/anzu
アンズの花のイメージを刺繍にしたもの。桜や梅の花にも似ている春の花です。ふっくらとしたやわらかな花びらや花芯はステッチを幾重にも重ねて膨らみを表現しています。
「キナリ×箔」は、溶ける生地に刺繍を刺した段階で箔プリントを施し、その後に生地を溶かすことで、刺繍の部分のみに箔を残しています。繊細な光沢感があり、綿糸のやわらかさが残ったままの優しい風合いに仕上がっています。
素材:ベース リネン 100%/刺繍糸 コットン 100%

庭園/teien
絡み合う蔦と花をステッチで表現したレース。お湯で溶ける生地に刺繍を刺したのち、リネンを裏から当てて部分的に留めつける手法で制作しています。そのためお湯を通した後は花や葉が浮かび上がり、影を作り出します。
「キナリ×箔」は、生地を溶かす前に箔プリントを施し、その後お湯に通して、刺繍の表面のみに箔が乗っているという状態を作り出しています。ステッチの表情や糸のやわらかさを残したまま、繊細に光っています。
素材:ベース リネン 100%/刺繍糸 コットン 100%

昼夜/chuya
花のように見える可愛らしい組織からできたツイード。飛びが多くざっくりと織られることでよりやわらかな風合いとなっています。裏からみると格子柄のように見えるのが面白いポイントです。
素材:ウール 100%

きんとと/kintoto
赤い糸は30番手双糸、水玉のチェックの部分はそれより太い16番手双糸を使用。表から見ると点の集合体によりチェックが浮かび上がる。裏からみると刺し子を施したようなツイードに。異なる番手(糸の太さ)の組み合わせで縮率差によるぼこぼこした表情が生まれています。
素材:ウール 100%

夜空/yozora
刺し子を施したような和の要素を感じさせる柄。ひし形の集合体のようにも見えます。
手編みのニットのようにやわらかく軽い風合いは、泉州の紡績工場でつくられたTOP糸を使用しているため。
TOP糸とはワタの状態で染色し、その後に紡いだもの。泉州の工場ではさまざまな色のワタをブレンドし独特なカラーを紡ぎ出しています。
素材:ウール 100%

十五夜/jyugoya
きちんと並列された組織図から生まれるいびつなドットは、手紡ぎのような糸形状により形成されています。ドットの中身は太番手のレーヨン、ウール、ウール/シルク/ナイロンの3種類の糸が織り込まれています。
レーヨンの光沢、シルクのナチュラルなネップ、ダルなウールがミックスされて表情に奥行きを与えています。
素材:ウール 72%、レーヨン 18%、シルク 8%、ナイロン 2%

三寒四温/sankanshion
モール糸や杢糸(もくいと)などいろんな糸を楽しげにざっくりと織り込んだやわらかなツイード。
春を懐かしむような黄色の配色は、そんな景色を窓から眺めるようなチェックの織りになっています。
素材:ウール 84%、アクリル 14%、ナイロン 2%

桜貝/sakuragai
たくさんの糸を組み合わせた糸見本のようなツイード。うすいラベンダーの糸はウールとシルクの糸を5本合わせて撚り1本の糸に仕上げています。実はこの5本はほんのりと異なる色を撚り合わせており、糸に深みを持たせています。グリーン系とオレンジ系で美しく絣染(かすりぞめ)した糸は尾州で染めていますが、この絣染め屋さんは新体操のリボンをグラデーションに染める仕事も請け負っています。
素材:ウール 80%、コットン 14%、シルク 5%、ナイロン 1%

檸檬/lemon
ぐりぐりと太い白糸はコットン、それ以外はウールで構成されています。ウールはタスマニアラムの上質でやわらかな原料のものを使用。やわらかくニットに適した糸のため、細いナイロンで巻き、織りに耐えうるよう強度をプラスしています。実は緯糸(よこいと)にさりげなく、小さなワッカのループヤーンを使用。このループヤーンのおかげでふわっとした優しい表情や膨らみが楽しめます。
素材:ウール 77%、コットン 19%、ナイロン 4%

深森/shin-shin
極力最大限にざっくりと織り、整理加工に頼らず糸本来の持つ風合いをそのまま楽しめるように織ったツイード。グレーの糸は先に糸起毛し、織られた糸と糸の隙間をスモーキーに埋める作用もしています。黒の糸は壁糸(かべいと)といい、太い糸に細い糸を巻き付けながら芋虫のようにうねうねさせています。このうねり具合も職人さんの感性が関係しており、ループにならない絶妙なうねり具合に仕上げています。多様な形状を組み合わせ、深みのある表情に仕上がった生地です。
素材:ウール 96%、ナイロン 4%
生地の制作の様子
愛知県一宮市の工場で「深森」が織られている様子です。(提供:STAMPS)





































