ブルーの縞模様に、横断するようにあらわれる有機的な曲線と陰影。
1935年に創立されたフィンランドのインテリアブランド「アルテック／Artek」の90周年を記念してつくった「90周年 アニバーサリーポスター」は、一見するとシンプルですが、眺めているとその奥深さに気がつきます。

デザインしたのは、ヘルシンキを拠点に活動するビジュアルアーティスト、インカ・ベル／Inka Bell（1981-）。シルクスクリーン印刷とレーザーカットを組み合わせて描いたこの作品は、青と黒のインクを何層にも重ね、さまざまな角度からレーザーカッターをあてて彫り込むことであらわれる凹凸や模様、濃淡が印象的です。平面とも立体ともいえる彼女の作品は、アルヴァ・アアルトの名作「パーテーション 100」に着想を得て生まれました。



紙とインクを使ったアナログな版画と最先端技術であるレーザーカッターを掛け合わせたベルの手法は、アアルトデザインの特徴である、自然素材と工業技術との融和に共通するものを感じます。

まるでアルテックの家具のようにシンプルながら味わい深いポスターが、デザイン好き、アート好きの心をくすぐります。

版画など紙の彫刻作品を得意とするビジュアルアーティスト。グラフィックが活き活きと見えるよう、素材や印刷技術を駆使し、二次元と三次元の間のような独自のアートを生み出しています。

ポスターのテーマとなった「パーテーション 100」。細いパイン材をすだれ状につなぎあわせたシンプルなかたちで、アルテック製品全体を連想させるアイテムとして選ばれました。ポスターでは、アルテックのアイデンティティを示す色としてブラックとブルーを選び、アルヴァ・アアルトらしい有機的な曲線を表現しています。