フィンランド・ヘルシンキにて創設されたインテリアブランド「アルテック／Artek」が、2025年に90周年を迎えました。
それを記念して、同じくフィンランドを代表するブランド「マリメッコ／marimekko」とコラボレーションした家具シリーズを制作。北欧デザイン好きにとってはもちろん、２つのブランドを知らずとも胸が躍る限定家具の誕生です。


左がスツール 60 ロッキ、右がキヴェット
アルテック創立者のひとりであり、フィンランドを代表する建築家・デザイナーのアルヴァ・アアルト／Alvar Aalto（1898-1976）が、すべての人にすぐれたデザインを届けるべく生み出した「スツール 60」「ベンチ 153B」「テーブル 90D」の３つのアイテム。

そこに、マリメッコで数々のデザインを手掛けたデザイナー、マイヤ・イソラ／Maija Isola（1927-2001）の３種類のパターン「ロッキ」「キヴェット」「セイレーニ」を施しました。


ベンチ 153B キヴェット
アルヴァ・アアルトとマイヤ・イソラに共通しているのは、デザインに自然を取り入れているところ。アアルトは自然と調和する建築を残しただけでなく、彼のデザインに多く見られる曲線はどれも有機的な雰囲気をまといます。
マイヤがデザインした「ロッキ」は波形の影を、「キヴェット」は庭にあった石、「セイレーニ」は水の動きにインスピレーションを得ています。

自然との繋がりを強く感じるデザインを残した２人のデザイナーの作品。まるでもともとそうであったかのように、デザイン同士がうまく溶け合います。




テーブル 90D セイレーニ
テキスタイルパターンを家具に施すにあたり、採用されたのは「象嵌（ぞうがん）」と呼ばれる技法。突板をパターンのかたちにくり抜き、そこに別の板をはめ込み模様をつくります。
木の縦目と横目のコントラストで表現された、マリメッコの陽気なパターン。高い木工技術を誇るアルテックだからこそできることです。


デザイン大国であるフィンランドを象徴する２つのブランドがつくる家具には、使い心地が付随するデザイン性の高さ、90年間培った技術があるからこそ実現した表現方法、ポジティブなエネルギーに満ちたパターンデザインと、一生ものにふさわしい理由にあふれています。この夢のようなコラボレーション、見逃す手はありません。

『セイレーニ』（1964）
マイヤ・イソラがギリシャを旅していた1960年代初めに誕生したデザイン。水の流れをヒントに、「セイレーニ」を含む複数のパターンを制作しました。その名のもとになったのは、ギリシャ神話にあらわれる上半身が人間、下半身が鳥（もしくは魚）とされる海の怪物セイレーン。波紋を描いたような曲線は、航海中の人間たちを惑わしたとされるセイレーンの歌声も表現しています。

『キヴェット』（1956）
石を意味する「キヴェット」は、ハサミで切り抜いた円がベースになっています。イソラの自宅兼アトリエの庭にあった大きな石がアイデアのもとになっていると言われています。

『ロッキ／Lokki』（1961）
マイヤ・イソラが窓にかかるカーテンを眺めていたときに遭遇した景色に着想を得て生まれたデザイン。差し込む日差しが、揺れるカーテンに波のような影を落としたのを目にし、「波模様が描かれた生地なら、例え小さくカットしても立体感のある素敵なテキスタイルになるはず」と思いつき、フィンランド語でカモメを意味する「ロッキ」を描きました。

「すべての人の暮らしにいいデザインを」という考えのもと、アアルトがたどり着いたのは家具パーツのスタンダード化でした。
代表的なものが、アルテック独自の曲げ木加工を施した「L-レッグ／L-Legs」。このL-レッグを応用し、サイズやかたちの違うさまざまな天板と合わせることで、多様なニーズに応えるラインナップを実現。

また、機械による工程と職人による手作業の製造システムをつくることで、高品質な家具を適正な価格で大量生産することを可能にしました。効率よく機械化を取り入れることで、より多くの人に、デザイン性も機能性も優れた家具を届けることができるようになったのです。

天板には、枠組みしたバーチ材の上下に薄い板を張って仕上げる「フラッシュ構造」を採用。何年使ってもたわむことのない丈夫さと、楽に持ち上げられる軽量さの両方を兼ね備えています。