つくり手の人柄と想いを訪ねて、
イロセのアトリエへ

東京にある雑居ビルの4F。ここはイロセのショールーム兼アトリエ。 ずらりと並ぶ革小物たちに囲まれながら、温かい笑顔で迎えてくださった、兄の高橋源(げん)さんと、弟の大(だい)さん。
作品から受けるイメージ通りの、穏やかで柔らかな雰囲気をまとった素敵なお二人。 我が子のように作品について語る様子からは、 愛情をたっぷり注いで、大切に物づくりをされているのだということがしっかりと伝わってきます。

お二人は同じ服飾系の学校を卒業し、源さんは洋服を、大さんは鞄をつくる会社で働きますが、 やがて引き寄せられるように二人で「イロセ」を立ち上げます。

「もともと、そんなに革製品に詳しかったり、こだわりがあったわけではないんです」というお二人ですが、 だからこそ、既成概念のない自由な発想が生まれるのだそう。「熟練の職人さんには、しょっちゅうびっくりされちゃうんですよ」と源さん。従来のものとはまったく違った構造を提案する二人に、最初は戸惑う職人さんも少なくないそうです。けれど、丁寧に話し合いを重ねながら、新しい感覚と使い勝手の良さが融合した作品を誕生させているのです。
「熟練の職人さんでないとつくることができないものはたくさんあります」と示されたのは、「ポップアップウォレット」と、その前身となった「3Fウォレット」。繊細で美しい縫製と、複雑な構造の財布類などは、日本の熟練の職人あってこその作品だったのです。

 
 

使い心地を徹底的に確認しながら
洗練されていくデザイン

 

創作は、図面上ではなく、その辺にあるコピー用紙を折ったりしながら「こんな感じがいいんじゃない?」と、兄弟で会話しながら行なわれることも多いそう。それを実際の素材でつくって使い心地を確認し、何度も何度も修正を重ねていくそうです。 「ミニチュアサイズでつくったときはかわいかったのに、原寸にするとそうでもなくなることもあるんです(笑)」と大さん。「販売をしているものでも、気になることがあれば改良を加えるんです。それで変わっていったものもいっぱいあります」と源さん。構造を突き詰めて生まれたデザイン、それが手にするものに感動を与え、長く魅了し続けているのです。

 
 

シームレスシリーズが誕生した
深い想い

 

今や「イロセ」の代表的なデザインの一つとなった「シームレス」シリーズですが、なんとこのショールーム兼アトリエでほとんどの製造工程を行なっているのだとか。 熟練の職人の方々に委託してつくられている商品がある一方、なかなか若手の後継者がいない業界に危機感を持っていること、そしてどうしても高価になってしまうことなどに課題をお持ちのお二人。複雑な縫製が一切ない「シームレス」シリーズは、そのような課題に挑んで生まれた第一歩。今後様々な新しい作品が、自社のアトリエでつくられていくかもしれません。イロセのアトリエは、そんな新しい時代の風を感じさせてくれる素敵な場所でした。

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