2022.11.14 up

フリーデザイン オーナー対談
お客さまと“スウィング(共鳴)”する未来へ

いつもご愛顧いただいている皆様のおかげで、フリーデザインは2022年10月1日に16周年を迎えることができました。
フリーデザインが提案する暮らしの世界観や商品の魅力を少しでも多く伝えたいという想いで、全力で駆け抜けてきた16年。
お客さまにフリーデザインをもっと身近に感じてもらいたいと思い、フリーデザインにはどんな人がいて、どんな想いで運営しているのかをご紹介します。まずは当店のオーナー2人の対談です。
実は、当店はオーナーが2人という、少し珍しい体制で運営しています。
オーナーという肩書きではありますが、私たちにとっては、いつもスタッフとともに汗を流しているイメージで、とても身近な存在。常にお店の先頭を走っている2人の背中を見ながら、日々過ごしています。

こちらでは、そんなオーナー2人の出会いから、フリーデザインオープンまでの歩み、さらに、これからのフリーデザインについてを、いつも商品ページのライティングを担当しているライターの若狭さんに取材してもらいました。
フランクな2人の人柄を通して、フリーデザインをもっと知っていただけたら幸いです。

Profile

伊藤 聡/Akira Ito
3歳の娘と1ヶ月の息子の2児の父。娘と公園に行くことが毎週の楽しみ。毎晩の晩酌はかかせません。

井川 雄太/Yuta Ikawa
珈琲と映画と音楽をこよなく愛す1児の父。人をクスっとさせることに生き甲斐を感じています。

―――

今日はお2人のこれまでのことをいろいろ聞けると楽しみにしてきました。まずは、出会いについて教えてください。

伊藤:

出会いは大学四年のとき。新卒で入った会社がたまたま一緒で、入社前研修のときが最初かな。

井川:

あいうえお順でとなりだったから、2人でチームを組むことも多くて。そこで意気投合して、お互いの家を行き来したりもしたよね。

―――

あいうえお順で出会って意気投合なんて、運命的ですね! どういうところで意気投合したのですか?

伊藤:

僕はもともと、人と一緒に何かをつくり上げたいという想いが強かったから、経営というものに興味を持っていて、その話をしたら彼も同じようなことを考えていた。新卒で入ったところは小さい小売りの会社だから、入社してすぐに店長になれて経営を学べるっていうところがその会社に入った理由の1つだったんだけど、そこも彼と同じだった。

井川:

細かく言うと、伊藤くんは人と一緒に何かをつくり上げるということに興味があったけど、僕はお店という空間をつくりたくて。学生時代にお気に入りのカフェがあって、そこの店内は心地よい音楽が流れ、素敵な家具や装飾品があり、美味しいごはんを食べることができて、そこに行くといつも幸せな気持ちになれた。そんな多幸感溢れる空間をつくって、お客さまに共有したいという思いがあった。

伊藤:

そういう全く同じでないところも「いいじゃんいいじゃん」って。最初は、そんな話をして盛り上がってた。入社してからは、別々のところに配属されたんだけど、まずは、それぞれしっかり店長を目指していこうと。僕も井川くんもわりと早めに、1年くらいで店長を任されて。あのとき、経験を積むことができたのはよかったよね。

―――

語り合うだけで終わらず、実際にお2人でお店をはじめることになるかと思うのですが、その頃のお話を聞かせてください。

井川:

起業前の会社には、僕が4年、伊藤くんが4年半いたかな。その中で、店長経験を3年以上やって、 “お店づくり”に関しては、自信もついていた段階だったので、そろそろかなと。

伊藤:

少ない資金ではじめるなら、何ができるかをずっと考えていて。井川くんが先に準備を始めて、たまの休みには僕も会って、ということを半年だけやってた。

井川:

会社になる前に、まずアメリカンヴィンテージを取り扱う「ディーラーシップ/DEALERSHIP」というお店を2004年の12月にオープンしました。2ヶ月全部2人で手づくり。店の床も壁も自分たちで貼って、ペンキを塗って。

1.夢が詰まった契約直後のお店。2.お店の内装は全てDIY。3.オープン前のアメリカ買い付け。4.記念すべきオープンの日。2人でテープカット!

―――

お店はお2人だけで切り盛りしていたのですか? 2人のうち、どちらが店長だったのでしょうか?

井川:

店長っていう言葉は使っていなかった。最初からダブルオーナー。だって、2人で同じ300万円ずつ出資していたから。そのために、起業前の会社にいるときに貯めて。そういえば、貯金額も随時確認していたよね。「ちゃんと貯めているだろうな」って(笑)

伊藤:

最初の数ヶ月は2人だけですべてをやってたんだけど、お店の運営もオンラインショップの制作も膨大な時間がかかるので、ちょっとこれでは成長に限界があると思った。当時はアルバイトを雇う余裕もなかったから、お互いの家族に仕事を手伝ってもらうこともあったよね。

―――

すごくアットホームな光景ですね。ダブルオーナーって難しそうというか、意見が合わなくて仲違いする……みたいなイメージもあるのですが、どのように信頼関係をキープしているのでしょうか?

井川:

お互い性格やタイプが違うし、絶対考えが合わないところが出てくるはずだから、ちゃんと話し合うようにしようっていう話をしたと思う。

伊藤:

うん、したね。考えが違うことは当たり前だと思っているから。

井川:

だけど、お互いに強い分野を組み合わせたら、1+1=3とか4にできるよねっていう実感もあったし、そうなるだろうっていう思いもあった。実際そうだったし、人にもよくそう言われた。「2人はパートナーとして、すごくハマっているね」って。

ディーラーシップオープン初期の様子(2005年ごろ)

―――

個人を尊重しつつ、きちんと話をするということですね。簡単そうで実は難しいことですよね……。実店舗とオンラインショップを持つというのは、最初から計画していたのですか?

伊藤:

最初から、実店舗とオンラインショップを並行して進めていこうっていう感じだったよね。実店舗での売場づくりや接客は二人で担当して、オンラインショップづくりでは、僕が制作担当、井川くんが写真撮影担当で。

井川:

最初は大変だった。伊藤くんが、ウェブ制作用のソフトとか何にも使わずに、全部メモ帳アプリでコーディングしてたし(笑)すごく分厚い本を買ってきて、チェックしながら全部手で打って。

伊藤:

今ではありえないかも知れないけど、テーブルタグを使ってサイト全体の構成を組み立ててたし(笑)

井川:

実物を見て触って納得したうえで買い物をしてもらいたかったし、インターネットを通して古きよきアメリカの世界観を日本中の方々に紹介してみたいという想いは最初からあった。

伊藤:

結果としてお店に来てくれた方がオンラインショップで買い物をしてくれたこともあったし、逆にオンラインショップを見て実際に来店してくれることもあったから、どちらもやることによって相乗効果があったよね。

井川:

両方やることは、今もうちの特徴でもあり、強みでもあるかなと思ってる。

2016年、デザインを学ぶ旅。カリフォルニアのイームズハウスの前でにっこり。左から井川、伊藤。

―――

専門書片手にメモ帳アプリで手打ちとは、根気のいる作業ですね……。ディーラーシップを運営しながら、フリーデザインをはじめたのはなぜですか?

井川:

最初から、コンセプトの異なる複数の店舗をやりたいっていう夢を持っていて。

伊藤:

そうだったね。ディーラーシップがある程度軌道に乗って、そろそろ2つ目のお店をやりたいねっていうときに、たまたま吉祥寺を歩いてたら、素敵な物件に出会ってしまったところからだよね。

井川:

うん、吉祥寺はお互いに好きな街だったから。子どもの頃から通っていたし。

伊藤:

僕も吉祥寺は子どもの頃から親と行って映画見たり、成長してからも何かとよく行く青春の街だった。

井川:

だから、いつかは吉祥寺にも店を出したいっていう憧れがあって、夢のひとつだった。そこに素敵な物件が新築で建って。ちょうど同時期に、今、バイヤーとして活躍してる樋熊くんに参画してもらったのも大きかった。僕の音楽仲間だったんだけど、センスがすごいよくて。僕の目に狂いはなかったね(笑)

伊藤:

フリーデザインは、物件との出会いと樋熊くんとの出会い。だから、樋熊くんがいなかったらフリーデザインはなかったかもね(笑)

2015年スウェーデン出張。左から樋熊、井川、伊藤。

―――

運命的な出会いが2つも重なってつくることになったフリーデザインですが、どういうものを扱うかは最初から決めていたのですか?

井川:

そうですね。そもそも、僕らは欧米の輸入雑貨にとても興味があって、それらを扱うお店をやってみたかった。というのも、高校生の頃に代官山の輸入雑貨を扱っている店に通ったりしてて。

伊藤:

僕は、中学の頃から行ってた(笑)

井川:

伊藤くんは中学からで、僕は高校でデビューしました(笑)その店で、これまで見たこともないものと出会ったあの衝撃が忘れられなくて。世界中のものが集まる輸入雑貨の店がやりたいと思ってた。

フリーデザインオープン当初の様子。

―――

お2人とももともと輸入雑貨に興味があったというのも意気投合した所以といえるかもしれないですね。輸入雑貨に興味を抱いたきっかけというか、ルーツのようなものってあるのでしょうか?

伊藤:

そういえば、運命的という視点でいうと、井川くんの親戚が北欧の家具や生活雑貨の会社をやってたんだよね。

井川:

そうそう! お店をはじめた当初は、意識してなかったんだけど、かつて僕の大叔父が村田合同という会社を経営していて、それこそ80年代初頭にアラビアの正規代理店としてティーマを日本で最初に輸入したのが村田合同。その時に役員だった僕の父親が日本のショップで展開するときの責任者だった。

伊藤:

すごいよね。

井川:

正直最初は忘れてたんだけどね(笑)生活の中に溶け込みすぎてて、ティーマということを特に意識せず使っていたから。

伊藤:

忘れてたんだ(笑)

井川:

ティーマがあることが当たり前だったからね。お店をやり始めて、ティーマを取り扱うという段階になって、そういえば……って思い出した。村田合同は他にも、ジョージ・ネルソンの時計を輸入していたんだけど、それだけではなくて、ライセンスをとって日本で製造もしてた。あと、マリメッコのチーフデザイナーとして活躍したヴォッコ・ヌルメスニエミの独自ブランド「ヴォッコ」の日本の取り扱いを父親が担当してたから、家に招待されたりもしてたみたい。ヴォッコさんの旦那さんもアンティ・ヌルメスニエミというフィンランドを代表するデザイナーなんだけど、一緒に自邸のサウナに入ったって父親に自慢されたこともあったね(笑)
実家では今でもその当時取り扱っていたティーマを使い続けている。伊藤くんも子どもの頃からからティーマを使ってたんだよね?

伊藤:

僕の場合は、叔母がフローラグラスを使っていて、遊びに行くと牛乳をそれで出してくれた。子ども心に「おもしろいコップだなぁ」と思ったのが印象に残ってる。それ以外にも、ティーマが食器棚にたくさん置いてあって、おやつはティーマで出してくれてたんだよね。当時はまったく意識してなかったけど、大人になってから改めて、「これティーマじゃん!」って、びっくりした。

1.フィンランドで買ってきたマリメッコの服を着て庭で遊ぶ幼少期の井川。2.ジョージ・ネルソンの時計の商談の様子。ハワードミラー社社長(手前)と村田合同社長(奥)。3.ヴォッコ・ヌルメスニエミ氏のオフィスにて。左奥は井川のお父様、右から2人目の女性がヴォッコ氏。

―――

子どものころから北欧のものが生活に溶け込んでいたんですね。それに、今でもその当時の物を変わらず使っているというのも素敵です。そういうバックボーンがあったからこそ、今フリーデザインは北欧を中心とした生活雑貨を取り扱っているのですか?

井川:

当時は、ティーマのデザイナーがカイ・フランクでとか、何年につくられてとか、知識的な背景や歴史を知らなくて、単純に“使いやすい食器”として使っていたと思う。でもそれは、北欧の人たちも一緒で、その商品のバックボーンよりも、使いやすくて丈夫、普遍的で長く使えるという点が素晴らしいと感じて使っているんじゃないかな。

伊藤:

そういうところにすごく共感して、みんなにも知ってほしいなって思ったのが、今フリーデザインが北欧を中心に据えている理由の1つではあるよね。

井川:

生活に溶け込んで、世代を超えて使い続けられるって素敵なことだもんね。デザインもそうだけど、北欧の暮らし方や考え方にはすごく共感する部分があって。買い付けや視察で何度も北欧に足を運ぶ度に、いいな、素敵だなって感じることがたくさんあった。

伊藤:

イッタラ村に行ったときはイッタラのガラス工房を見せてもらったよね。バードがつくられてるところとかも実際に目の前で見て感動した。

井川:

アラビアの本社で製品をつくっていた時代に1度見学させてもらったこともあった。その数年後にその工場の生産はストップしたから、あれはすごく貴重な体験だった。そういう現地の温度感というか、実際に物が生まれていく様子を間近で見れたことで、北欧に対する愛や想いが強くなっていったと思う。それをお客さまにも伝えたいっていう気持ちがどんどん大きくなっていった。

伊藤:

ライフスタイルをいきなり大きく変えるっていうのは難しいものがあるかもしれないけど、北欧の食器や雑貨を生活に取り入れて北欧マインドを感じてみるだけでも、暮らしが豊かになると思う。その第一歩のきっかけとなるようなお店にしたいよね。

写真左からスウェーデン出張(2015年)、フィンランド出張(2016年)。心地よい空間のカフェで過ごすことも大切な学びの時間。

―――

ちょうど1年前に、実店舗の大規模なリニューアルをしました。そのことについて聞かせてください。

井川:

今までで1番大きなリニューアルだったよね。

伊藤:

やってよかったと思う。

井川:

オープン当初は「大人のための輸入雑貨店」というコンセプトではじめたから、ヨーロッパのデザイン雑貨やステーショナリー、ミッドセンチュリーのヴィンテージものなどを扱っていた。その中に北欧雑貨もあるという程度で、今とは商品のラインナップも全然違ってたよね。

伊藤:

そうだね。世界中の商品を扱っていた中で、改めて北欧のものって素敵だねっていう想いが強くなっていった。それは、さっきも話したような僕らの子どもの頃の影響であったり、実際に買い付けで北欧に行って感じたことであったり、さまざまな体験が積み重なった結果だと思う。

井川:

僕たちがやりたいことを踏まえて、オンラインショップは少しずつ変化をしてきたんだけど、実店舗との世界観にギャップが生まれてしまったという問題を抱えていて。変えたいけど費用もかかるし、営業も止めなきゃだしってなかなか踏み切れなかった。

伊藤:

1日も休まないというところを大事にしていたから。インターネットを見てお店に来てくれた人が、お店の前で定休日であることに気づいたら、すごく申し訳ないよねって。ただその想いで。

井川:

でも、今後の10年20年30年っていう長いスパンで考えた時に、もう少し広い視野を持った方がいいんじゃないかと思って。このタイミングで、本来やりたいコンセプトでお店づくりをした方が、多くのお客さまに喜んでもらえるんじゃないかと思い、リニューアルをする判断をしました。

リニューアル前後の店内の様子。写真左からリニューアル前、リニューアル後。

―――

よりお客さまに喜んでいただけるお店になったと思います。最後に、16周年を迎えて、これからのフリーデザインをどんなお店にしていきたいかを聞かせてください。

伊藤:

共感の輪を広げていきたいかな。自分が本当に気に入ったものに囲まれた生活を送ることで、豊かで幸せな人生にできるということを、お客さまと共感し合いたいし、暮らしを楽しむ輪を広げていきたい。「それいいね」っていう共感がお客さまにも伝われば我々の存在意義があるのかなって。北欧の文化やプロダクトがお客さまの暮らしの一部になり、愛着のあるものになっていってもらえるようにするには何ができるかを、考えていきたい。

井川:

そうだね。やっぱり僕たちが実際に北欧に何度も足を運んで共感した、ライフスタイルや考え方、思想だったりを日本のお客さまに共有したい。豊かな暮らしになるヒントを少しでも多くお届けしたいし、それがもっと近い距離で伝えられたら嬉しいよね。

伊藤:

よいものを永く大切にすることや、日常を大切にするライフスタイルなど、北欧から学んでいることって多いよね。

井川:

本当に素敵だよね。僕たちも16年やってきて、今まで学んだり経験してきたことを活かして、今一度どういうものを提供してお客さまに楽しんでもらうかっていうことを考えるフェーズ。組織も成長してきて、できることの幅も広がってきたし、お客さまと一緒にいろんな意味でスウィングしたい(笑)

伊藤:

スウィングしたいねー!(笑)

井川:

これめっちゃいいなと思ったら、もう共有したくてしょうがない。自分たちが本当によいと思っているものを、いいねって共感してもらえたら幸せだよね。フリーデザインっていうお店に来れば、いつもワクワクする何かに出会える場になりたい。お客さまと“スウィング”する未来へ向かって、楽しい企画を今後たくさんやっていきたいと思っているので、乞うご期待(笑)

「16(周年)」ポーズをとるおちゃめな2人。

いかがだったでしょうか?
フリーデザインは昨年15周年を迎え、お店も大きなリニューアルをしてから今年で丸1年。大きなステップを踏み出して、次なる20周年に向けて走っている真っ只中。皆様にもっと楽しくお買い物をしていただけるよう、充実した商品セレクトやコンテンツづくりに励んで行きたい! という想いがスタッフ一同みなぎっています。
これからも楽しいモノ・コトをたくさん企画しますので、ぜひ一緒に“スウィング(共鳴)”してくださいね!

話し手
伊藤聡、井川雄太


聞き手
若狭遊

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