日本を代表するデザイナー、柳宗理がデザインした「ステンレスカトラリー」。1974年に販売されて以来、現在に至るまで国内外で愛され続けています。また、同年にグッドデザイン賞を受賞するなど、デザイン性の高さも評価されています。
柳宗理の手掛けたカトラリーの特徴は、その独特なフォルム。一般的なカトラリーとの違いが、一見してわかります。例えばスプーンは、少し横長になっていたり、フォークは枝が短く、すくい根が広い。ナイフも幅広くなっています。このかたちは、単に見た目のよさを考えたのではなく、使う人の目線になって考えられているのです。スプーンは、横長にすることでお皿の隅に残ったスープもすくいやすく、フォークはすくい根が広くなることで「刺す」だけでなく「すくう」こともできます。ナイフは幅広にして面積が広くなることで「切る」だけでなく「乗せる」ことも。
さらに、手に持ったときにも驚きが。スプーンやフォークを真横から見ると、柄の部分が緩やかにカーブしており、手にしっくりと馴染んで持ちやすくなっています。デザインと機能を兼ね備えた、こだわりのあるフォルムなのです。
この絶妙なかたちを生み出しているのは、刃物の町として有名な新潟県燕市を拠点とする「日本洋食器株式会社」。1枚のステンレス板からの型抜き、成形、研磨など数々の工程を経て、ひとつのカトラリーが完成します。その工程を全て機械に任せるのではなく、きめ細やかな作業は、熟練した職人の手によって行われているのです。当たり前のように使っているカトラリーも、誰かの人の手によって丁寧につくられていると思うと、長く大切に使っていきたくなります。
カトラリーのバリエーションは全部で13種類。スプーンとフォークはそれぞれ5種類、ナイフは3種類あります。一見わずかなサイズの違いですが、例えばメイン料理を食べるときに男性は「テーブルスプーン」、女性は「デザートスプーン」を使うなど、手の大きさや使いやすさで選ぶこともできます。さらにスープをすくいやすいように考えられた「スープスプーン」や、パスタを絡め取りやすい「パスタフォーク」など、あるととても便利なラインナップまで。一通り揃えておくと、どんな料理を食べるときも使いやすいカトラリーを選ぶことができます。
なぜ、柳宗理のカトラリーが世界中で愛され続けているのか。見た目だけじゃないその魅力を、ぜひご自身の手で触れて感じてみてください。毎日の食事が今まで以上に楽しくなるはずです。